全身麻酔で手術を受けるとき、「眠っている間におしっこはどうなるの?」「尿道に管を入れるのは全員なの?」「目が覚めたあと、普通にトイレへ行ける?」と疑問に思う人は少なくありません。手術前の説明で尿道カテーテルについて聞き、不安を感じるケースもあります。
実際には、全身麻酔中も腎臓では尿が作られ続けます。ただし、尿道カテーテルを使用するかどうかは一律ではなく、手術の種類や長さ、出血・輸液の見込み、持病、術後の排尿機能などを踏まえて判断されます。2026年現在も、必要性に応じて使用し、不要になれば早期に抜去する考え方が重視されています。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:全身麻酔中も尿は作られるが、尿道カテーテルはすべての手術で必須ではない。
- 要点2:必要な場合は、麻酔で眠ったあとに挿入することが多い。手術時間だけでなく、術式や持病も判断材料になる。
- 要点3:術後は一時的に尿が出にくくなることがある。排尿できない、下腹部が張るなどの症状は我慢せず医療スタッフに伝える。
【まず知りたい疑問】全身麻酔中のおしっこはどうなる?
全身麻酔中も、腎臓は血液をろ過して尿を作っています。意識がなくなったからといって、尿の生成や膀胱の働きが完全に止まるわけではありません。
ただし、麻酔薬や手術による生理的な変化、点滴の量、血圧、腎機能などによって、尿の作られる量は変わります。また、麻酔や鎮痛薬の影響で尿意を感じにくくなったり、膀胱から尿を押し出す働きが一時的に低下したりすることもあります。
そのため、手術中に尿がたまる可能性がある場合や、尿量を正確に測定する必要がある場合には、尿道カテーテルを使用します。
尿道カテーテルとは、尿道から膀胱まで細い管を通し、尿を体外へ排出するための医療器具です。留置型では、管を膀胱内にとどめ、先端付近のバルーンで抜けにくくしたうえで、外側の排尿バッグへ尿を流します。
管を入れていれば、患者が眠っていても尿を排出でき、必要に応じて尿量を測定できます。一方、短時間の手術などで尿量を継続的に測る必要がなく、術後も自力で排尿できると見込まれる場合には、カテーテルを使用しないこともあります。
つまり、「全身麻酔を受けると必ず導尿される」という理解は正確ではありません。尿道カテーテルを使うかどうかは、麻酔の方法だけでなく、手術と患者の状態によって決まります。
【必要な理由を比較】尿道カテーテルは必須?手術時間・持病で変わる判断基準
尿道カテーテルを使用する主な目的は、膀胱を空に保つこと、手術中の尿量を把握すること、術後に自力で排尿するのが難しい場合に尿を排出することです。
米国疾病予防管理センター(CDC)のカテーテル関連尿路感染予防ガイドラインは、手術患者に尿道カテーテルを一律に使用するのではなく、医学的な適応がある場合に限って使用するよう推奨しています。適応がなくなった場合は、できるだけ早く抜去することも勧めています。
実際の判断では、次のような条件が検討されます。
- 手術の種類:膀胱や尿路そのものを扱う手術、骨盤内の手術などでは、尿の排出や術後の管理のために必要となる場合がある。
- 手術時間:長時間の手術では、膀胱に尿がたまることや、尿量を継続的に確認する必要性が高まることがある。
- 出血や輸液の見込み:出血量が多い手術や大量の輸液、利尿薬の使用が想定される場合は、尿量が全身管理の判断材料になることがある。
- 持病や排尿機能:前立腺肥大症、過去の尿閉、神経因性膀胱などがある場合は、術後に尿が出にくくなるリスクも考慮される。
- 術後の安静度:手術後すぐに歩けない場合や、長時間の安静が必要な場合は、排尿方法を別途検討することがある。
一方、短時間で終了する手術で、出血が少なく、術後に自力で排尿できる見込みが高い場合には、カテーテルを使用しない選択肢があります。
例えば、立川綜合病院の鼠径ヘルニアに関する患者向け説明では、短時間の手術では、両側の手術や特殊な場合などを除いて、全身麻酔でも尿道カテーテルを使用しない運用が紹介されています。ただし、これは同院の特定の手術に関する説明であり、すべての病院や手術に当てはまるわけではありません。
また、「手術が2時間なら必ず必要」「短時間なら絶対に不要」という単純な線引きもできません。手術時間は重要な要素ですが、それだけで決定されるわけではないためです。
持病についても同様です。腎臓病や糖尿病などの病名だけで一律にカテーテルの必要性が決まるのではなく、腎機能、神経障害の有無、排尿の状態、手術内容などを総合して判断します。
【いつ入れる?痛みは?】尿道カテーテルの挿入タイミングと実際の流れ
尿道カテーテルを使用する場合、全身麻酔で眠ったあとに挿入することが多くあります。手術開始前に必要な準備を行い、尿が排出できる状態にしてから手術を進めます。
八戸赤十字病院の麻酔科による患者向け説明でも、術後の排尿が難しくなる可能性がある場合、尿量の測定が必要な場合、長時間の手術で膀胱に尿がたまる可能性がある場合などを挙げ、全身麻酔を行ってからカテーテルを挿入するケースを説明しています。
ただし、挿入するタイミングは手術の内容や施設の手順によって異なります。全身麻酔をかける前に挿入する場合もあるため、全員が眠ったあとに処置を受けるとは限りません。
眠ったあとに挿入する大きな利点は、挿入時の痛みや不快感を意識しにくいことです。意識のある状態で処置を受ける場合には、尿道に管が通る際の刺激や違和感が生じることがあります。
一般的な流れは次のとおりです。
- 必要性の確認:手術内容や術後の状態を考慮して、カテーテルを使用するか決める。
- 挿入:必要に応じて麻酔や局所麻酔用の潤滑剤などを活用し、清潔な手技で尿道から膀胱へ管を入れる。
- 尿の排出・管理:管を排尿バッグにつなぎ、尿の排出状態や必要な尿量を確認する。
- 抜去:術後の状態や排尿機能を踏まえ、留置を続ける必要がなくなれば管を抜く。
眠っている間に挿入された場合でも、目が覚めたあとに尿道の違和感、下腹部の不快感、管が引っ張られるような感覚が出ることがあります。抜去時にも一時的な刺激を感じる場合があります。
痛みや違和感が強いときは、我慢せず看護師に伝えてください。管の位置や固定状態を確認してもらうことで、負担を軽減できる場合があります。自分で引っ張ったり、抜こうとしたりするのは避けましょう。
【尿量管理の実態】25〜50mL/時は絶対基準ではない
全身麻酔中の尿量管理について調べると、1時間あたり25〜50mLという目安を目にすることがあります。成人の尿量をイメージするための数字としては参考になりますが、すべての患者に当てはまる固定の合格ラインではありません。
尿量は体重、腎機能、循環状態、麻酔や手術による生理的変化、輸液量、出血、使用薬剤などによって変動します。そのため、手術中に尿が少ないからといって、直ちに水分不足や腎障害と判断できるわけではありません。
成人の尿量については、従来から体重1kgあたり1時間に0.5mLという目安が広く使われてきました。体重50kgなら25mL/時、70kgなら35mL/時に相当します。ただし、この数値は患者の状態や手術の種類を無視して一律に適用するものではありません。
2018年に公表された大腸・直腸手術の周術期管理に関するERAS学会の推奨では、尿量だけを根拠に追加の輸液を行う考え方には注意が必要とされています。手術中や術後の尿量が少ない場合も、血圧や循環状態、全体の水分バランスなどを合わせて評価する必要があります。
尿量が少ない状態が続く場合は、腎機能の低下や循環血液量の不足などを検討する必要がありますが、尿量の数字だけで原因を特定することはできません。逆に、尿量を増やす目的だけで不必要に輸液を増やすと、患者によっては水分過剰につながるおそれがあります。
尿量を継続的に確認する必要がある場合には尿道カテーテルが役立ちますが、尿量の測定だけを理由に、すべての患者へカテーテルを留置するわけではありません。
| 確認項目 | カテーテルを検討する状況 | 判断上の注意点 |
|---|---|---|
| 手術の種類 | 尿路の手術、膀胱や骨盤内の管理が必要な手術 | 術式ごとの必要性を確認する |
| 手術時間 | 長時間に及び、膀胱の管理や尿量測定が必要な場合 | 時間だけで一律に決めない |
| 出血・輸液 | 大量出血や大量輸液などが想定される場合 | 循環状態や全体の水分バランスも評価する |
| 持病・排尿機能 | 尿閉の既往、排尿障害、膀胱機能の低下などがある場合 | 病名だけでなく個々の状態を確認する |
| 短時間の手術 | 尿量の継続測定が不要で、術後の自力排尿が見込める場合 | カテーテルを使用しない選択肢もある |
この比較から分かるのは、尿道カテーテルの必要性を決めるのは、単純な手術時間や尿量の数字だけではないということです。手術の安全性と、カテーテルを使用することによる負担の両方を考慮して判断されます。
【術後の尿閉】全身麻酔後におしっこが出ない原因と対処法
手術が終わって目が覚めても、すぐに尿が出るとは限りません。麻酔からの回復途中では、尿意を感じにくかったり、排尿に必要な膀胱の収縮や筋肉の協調が十分に戻っていなかったりすることがあります。
術後に膀胱へ尿がたまっているのに、自分で十分に排尿できない状態を術後尿閉と呼びます。多くの場合は一時的ですが、膀胱が過度に膨らむまで気づかれないこともあるため、適切な確認が必要です。
主な原因としては、次のようなものが挙げられます。
- 麻酔薬の影響:膀胱の収縮や尿意の感覚が一時的に低下することがある。
- 鎮痛薬の影響:オピオイド系鎮痛薬などが排尿機能に影響する場合がある。
- 手術部位の影響:骨盤内、下腹部、脊椎などの手術では、排尿機能に影響が出ることがある。
- 痛みや緊張:傷の痛みや身体のこわばりによって、排尿しにくくなる場合がある。
- もともとの排尿障害:前立腺肥大症、神経障害、過去の尿閉などがリスクとなることがある。
- 活動量の低下:ベッド上での安静が続き、普段どおりの排尿動作を取りにくくなる場合がある。
術後尿閉については、2015年に日本クリニカルパス学会誌に掲載された消化器外科の研究も参考になります。2011年11月から2013年12月に胃がん、大腸がんなどの予定手術を受けた400例を調べたところ、43例、約10.8%に術後尿閉が認められました。後期高齢者であることや硬膜外麻酔の使用が、同研究ではリスク因子として報告されています。
この数値は特定の消化器外科患者を対象にした研究結果であり、すべての手術を受ける人の発生率を示すものではありません。それでも、術後尿閉は一部の患者に起こり得る問題であり、年齢や麻酔、排尿機能などを踏まえた管理が必要だと分かります。
術後に尿が出ないときは、無理に我慢したり、自分の判断で大量の水を飲んだりせず、看護師に伝えることが大切です。手術後は水分摂取に制限がある場合もあります。
医療スタッフは、最後に排尿した時刻、尿意の有無、下腹部の張り、手術内容などを確認します。必要に応じて、膀胱超音波検査で尿のたまり具合を調べます。膀胱に尿がたまっているのに排尿できない場合には、一時的な導尿や尿道カテーテルの再留置などを検討します。
尿意がないからといって、膀胱に尿がたまっていないとは限りません。特に麻酔からの回復途中では、感覚だけで判断せず、医療スタッフの指示に従うことが重要です。
【抜去後はいつから排尿できる?】硬膜外麻酔との違いと注意点
尿道カテーテルを抜いたあとは、自分で排尿できるかどうかを確認します。ただし、抜去後に何時間で排尿できるかは、手術の種類、麻酔の影響、尿量、安静度、施設の管理手順などによって異なります。
一般に、麻酔から十分に回復し、医療スタッフが安全と判断した段階で、トイレでの排尿を試みます。歩行が許可されていない場合は、無理に一人でトイレへ向かわず、看護師に介助を依頼してください。
抜去後に一時的な違和感や軽いしみる感じが生じることはあります。しかし、尿が出ない状態が続く、少量しか出ない、下腹部が張って痛むといった場合は、術後尿閉の可能性も考えて早めに相談する必要があります。
尿道カテーテルの留置期間については、米CDCのガイドラインが、適応のある手術患者でも術後できるだけ早く抜去し、継続する医学的な理由がなければ原則24時間以内の抜去を推奨しています。ただし、尿路の手術や、術後も厳密な尿量管理が必要な場合などは、留置を続けることがあります。
一方、硬膜外麻酔は、脊髄の近くにある硬膜外腔へ局所麻酔薬などを投与し、痛みを抑える方法です。全身麻酔と併用されることもありますが、硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔では、麻酔の範囲や薬剤によって膀胱の感覚や排尿機能が一時的に低下することがあります。
そのため、硬膜外麻酔を受けたからといって尿道カテーテルが必ず必要になるわけではありませんが、抜去のタイミングや排尿確認が重要になることがあります。
2015年の消化器外科研究では、硬膜外麻酔を受けた患者で尿道カテーテルを抜去するタイミングを見直した結果、研究対象となった改訂後の100例では術後尿閉が1例、1%に減少しました。この結果は特定の施設・手術の管理方法に関するもので、すべての患者に同じ抜去時期を適用できるという意味ではありません。
2026年2月26日付で検索結果に現れた麻酔に関する体験談にも、全身麻酔では尿道カテーテルを使用した一方、硬膜外麻酔では使用しなかった例が見られます。ただし、個人の経験だけでは医療機関全体の標準手順は分かりません。麻酔方法が似ていても、手術内容や術後の状態によって対応は変わります。
カテーテル抜去後は、次の症状に注意してください。
- 尿意があるのに尿が出ない、または少量しか出ない。
- 下腹部が張る、膀胱のあたりが痛む。
- 排尿時の強い痛みや灼熱感が続く。
- 血尿が増える、血の塊が出る。
- 発熱や悪寒を伴う排尿トラブルがある。
これらの症状がある場合は、入院中なら看護師に、退院後なら手術を受けた医療機関に相談してください。特に尿が全く出ない状態や、強い下腹部痛を伴う場合は、長時間様子を見ずに速やかに医療機関へ連絡することが大切です。
【全身麻酔おしっこ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:全身麻酔中におしっこを漏らしてしまうことはありますか?
A1:尿意を感じにくくなることはありますが、全身麻酔を受けると必ず尿漏れするわけではありません。必要に応じて尿道カテーテルで尿を排出するほか、カテーテルを使用しない手術では術後の排尿状態を確認します。
Q2:全身麻酔なら、尿道カテーテルは必ず眠ったあとに入れますか?
A2:眠ったあとに挿入することが多いものの、手術内容や施設の手順によって異なります。挿入が必要かどうか、いつ行うかは事前に医療スタッフへ確認できます。
Q3:短時間の手術でも尿道カテーテルを入れることはありますか?
A3:あります。手術時間が短くても、尿路の手術、排尿障害のリスク、術後の安静度などによって必要と判断される場合があります。一方、短時間で終了し、尿量管理や術後の排尿補助が不要な場合は、使用しないこともあります。
Q4:尿道カテーテルを抜いたあと、何時間以内におしっこが出ればよいですか?
A4:一律の時間基準はありません。手術や施設の方針によって異なります。尿が出ない場合や下腹部の張り・痛みがある場合は、指定された確認時刻を待たずに看護師へ伝えてください。退院後も排尿できない状態が続く場合は、手術を受けた医療機関に相談しましょう。
Q5:尿道カテーテルを抜いたあとに痛みや違和感が出るのは普通ですか?
A5:一時的に軽い刺激や違和感が出ることはあります。ただし、強い痛みが続く、血尿が増える、発熱する、尿が出ないといった症状は、感染や尿閉などの可能性があるため医療機関への相談が必要です。
まとめ:全身麻酔中のおしっこは個別の管理が基本
全身麻酔中も尿は作られ続けますが、尿道カテーテルが必ず必要になるわけではありません。手術の種類や長さ、出血・輸液の見込み、持病、排尿機能、術後の安静度などを考慮して、必要性が判断されます。
カテーテルを使用する場合は、眠ったあとに挿入することが多く、尿の排出や尿量管理に役立ちます。一方で、尿道への刺激や感染などのリスクもあるため、必要な期間だけ使用し、不要になれば早期に抜去することが基本です。
また、術後におしっこが出にくくなる尿閉は、麻酔薬、鎮痛薬、手術部位、年齢、もともとの排尿機能など、複数の要因で起こります。尿量の目安として紹介される25〜50mL/時という数字も、すべての患者に適用できる絶対基準ではありません。
手術前に確認しておきたいのは、「カテーテルを入れるかどうか」だけでなく、「なぜ必要なのか」「いつ抜く予定なのか」「抜去後に尿が出なかったらどう対応するのか」という3点です。過去に尿閉を起こしたことがある人、前立腺肥大症や神経因性膀胱などの排尿に関する持病がある人は、麻酔科医や執刀医に事前に伝えておくと、術後の管理計画を立てるうえで役立ちます。
尿道カテーテルは、必要な場面では手術中の安全管理を支える器具です。使用の有無だけで不安を大きくするのではなく、自分の手術で必要な理由と、術後の排尿確認の方法を理解しておくことが、安心して手術に臨むための第一歩になります。 (出典: 全身麻酔 おしっこ(Yahoo!ニュース))